院長コラムhead doctor’s blog
病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)さん18.3.3
先日病院のMSWさんから末期のがん患者さんの新規依頼をお受けした時のことです。
私に依頼するまでにご家族との退院調整を相当苦労された様子でした。
ご家族はMSWさんにいろいろと注文をし、病院サイドとして在宅医に紹介するまでに
様々なことをきっちりと詰めて準備万端にしないといけないと思っていたようです。
MSWさんから電話を受けた時は、いかに調整に苦労したかを教えてくれました。
病院のMSWさんは非常に多忙ですので、本当に大変だったと思います。
しかし、病院から在宅に移る時には準備万端にして頂く必要は全くありません。
その理由は簡単で、退院してから病状や自宅での過ごし方に合わせて準備すればいいからです。
言い換えると、自宅の様子が分からない病院スタッフに完璧な在宅の準備など不可能だからです。
では病院での退院調整の時に何を準備すればいいのか?
極論すれば、「ご本人/ご家族が自宅で過ごしたい」という気持ちがあるかどうかだけです。
ほぼ全てのご家族は、自宅で看病を継続できるかどうか不安です。
ほぼ全てのご本人は、自分のために家族に迷惑を掛けることを心配されます。
しかし「自宅に帰りたい」「本人の希望を叶えてあげたい」という気持ちがあれば、
在宅医療を開始する前にどんなに不安/心配が強くても、ほとんどの方は在宅医療を継続出来ます。
また我々も継続出来るように最大限お手伝いします。
どうしても継続困難の場合は入院先をこちらで手配します。
末期のがん患者さんには時間がありません。
結論を迷っている時間や先延ばしにしている時間はないのです。
「自宅に帰りたい」「最期は自宅で」と考えておられるなら、すぐに行動しましょう。
件のMSWさんは、私がお誘いして退院して1週間後に患者さんの自宅に来てもらいました。
入院中とは全く違うご本人とご家族の落ち着いた表情、自宅での生活の様子、
訪問する医師と看護師の関わりを見て感じて頂きました。
そして今までの退院調整の方法がいかに無駄が多く、在宅の現場に合っていないかを実感してもらいました。
熱心なMSWさんですから、きっとこれからの退院調整にこの経験を活かして下さると思います。
もうすぐ和歌山城の桜も満開ですね。
私もこの桜をあと何回見れるかは分かりません。
今の健康と在宅スタッフの皆様に感謝して、在宅緩和ケアに邁進したいと思います。