院長コラムhead doctor’s blog
追悼 S君19.12.2
今年ももうあと1か月ですね。
11月もあっという間に過ぎてしまいました。
時間なんて本当に限られていますよね。
今回は、今年の秋にお看取りした10代後半の少年S君のお話しです。
昨年10月にがんと診断され、病院で抗がん剤治療を受けていましたが、脳転移してしまい今後の治療はない病状となり、在宅医療目的で紹介されました。
初回訪問では、まだ脳転移の影響は少なく、普通に会話も可能でした。
S君は野球少年で、自宅には少年野球以来のグッズなどがたくさん飾ってました。
話しぶりも性格も優しい好青年ですが、野球の話しでは熱心に語ってくれます。
その後は脳転移の影響で徐々に病状が悪化し、会話も難しい状況になりました。
お父さんは会社の理解もあり、休職してお母さんと共にずっと看病されています。
病状悪化する息子に心を痛め、両親は心身ともにギリギリでした。
そんな折、S君のお兄ちゃんが留学先から急遽帰ってきました。
大学からは許可が出たと言っていましたが、恐らく学校側に相当頼み込んだのではないかと思います。
お兄ちゃんとS君は仲良く、苦しい病状でも兄の言葉には穏やかに話すS君。
またお兄ちゃんは両親のフォローもしてくれています。
また病院の担当医や看護師さんも自宅へ様子を見に来てくれました。
在宅療養の後半は、担当医からはほぼ毎日、お父さんに電話フォローもしてくれていました。
そして何よりも訪問看護師さん達が、獅子奮迅の働きをしてくれました。
私もみんなに負けないようにS君とご両親を最大限サポートし、今の私の力は出し切りました。
「息を引き取った」とお父さんから電話をもらい駆けつけると、お兄ちゃんがS君の名前をずっと呼んでいました。
すぐには最後の診察を行わずに、しばらくはそのまま待ちました。
こうして22日間のS君の在宅医療は終わりました。
先日、弔問のためにご自宅へ伺いました。
ご両親は葬儀の様子を教えてくれたのですが、なんと650人も参列者があったそうです。
葬儀場が作ったフォトブックも拝見し、当日の様子がよく分かりました。
さすがにS君の人柄ですね。
年齢に関係なく、人生の最期はその人の生き方が如実に出ることを再認識しました。
S君を担当したお陰で、病院小児科のがん専門の先生にも我々の在宅医療を知って頂けました。
そして今、その先生からのご指名で別の10代のがん患者さんを担当しています。
これもS君のお陰です。
わずか22日でしたが、多くのことを学ばせてもらいました。
ありがとうS君。
そして私が逝った時は、あちらの世界でキャッチボールして下さいね。
でも素人なので手加減して下さい、お願いします。