院長コラムhead doctor’s blog
The Final Riding24.5.2
今回は人生最後のridingのお話しです。
患者さんは18歳からずっとバイクに乗られていたそうです。
数年前に癌と診断されて以来きつい治療を大病院で受けてきました。
人生最後の愛車として、数カ月前に新車のバイクを購入されましたが、納車の日に1度乗っただけでした。
大病院での治療が終了し私の訪問診療が始まり、しばらくは体調も安定されていましたが、1カ月を過ぎたあたりから調子は悪くなり痩せる一方でした。しかし少し小康状態が続くタイミングがあったので、「今、何が一番したいですか?」と伺うと、即答で「バイクに乗りたい」と答えられました。
既にバイクに乗れる状態ではなかったのですが、「バイクに乗りたい」と話される時の眼が真剣だったので、覚悟は決まっていると感じた私は「分かりました、すぐに準備しましょう」と伝えると、ご本人に久々の笑顔が戻りました。
私はバイクに乗れないのですが、幸い担当している訪問看護師さんがバイク乗りだったので、家族さんも交えて打ち合わせをして3日後の決行となりました。
当日はご家族と一緒に、自宅近くの人や車がほとんどいない駐車場に移動しました。
さすがに独りで運転するのは無理で、車からバイクまで移動するのも車椅子だったのですが、バイクの乗る時は自ら足を挙げてバイクに跨りました。そしてエンジンを掛け、アクセルを吹かしてもらいました。
時間にしたら僅か10分弱でしたが、最高の笑顔でご本人だけ→ご家族全員→我々スタッフ全員と矢継ぎ早に記念写真と動画を撮りまくりました。
祝日にも関わらず、訪問看護師さんだけでなくケアマネさんと薬剤師さんも駆け付けてくれて賑やかな会となり、無事に帰宅されたあとは、ゆっくりと休養して頂きました。
ご本人とご家族にはかけがえのない想い出となりました。
世間の常識では許可されないご希望でも、どうしたら実現出来るのかを考えて実行するのが私の役割の1つです。
私独りでは何も出来ませんが、幸い私には協力して下さる方が沢山おられます。
今回も関係者の皆様、ありがとうございました。