たぶせ在宅クリニック 和歌山市の訪問診療

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院長コラムhead doctor’s blog

信じる者は強い24.9.15

在宅医療

久しぶりに担当した患者さんのお話しです。
以前、心地よい音は薬に勝るケースをご紹介しましたが、今回のキーワードは信仰です。

60代、男性、独居の方で、ある宗教(キリスト教系)の熱心な信者さんでした。
私への紹介直前に大病院でがんが見つかりましたが、ご本人の強い希望で何も治療はしないことを選択されました。そして近い将来、がんが大きくなって様々な症状が出ても自宅で最期を迎えたいということで私に紹介がありました。

初回訪問の時はまだ差し迫った状態ではなく、自宅生活を問題なくされていましたので、会話中心の訪問でした。
私「どうして癌治療を受けなかったのですか?」
ご本人「神が私に与えた試練なので、私はそれを受け入れます」
私「これからの事は不安ではないですか?」
ご本人「神は必ず私を救って下さいますので、がんが悪くなっても何も不安はありません。痛みの緩和だけ、先生にお願いします」

非常に強い信仰心をお持ちの方なので、万事こんな会話でした。
私の性格をみて、訪問毎にご本人が信じる教義や信仰についての小話を必ず1つしてくれました。
ご本人の傍に置かれている古い聖書は、手垢や付箋がいっぱい付いていて隅々まで熟読していると分かります。
私にはそこまでの強い信仰はないので、世の中にはいろんな人がいるんだなと感じました。

この方は約4カ月担当しましたが、後半は病状が悪化し体力低下に伴い寝ていることが多くなりました。
それでも精神的には安定したままで、変化する体調を冷静に受け止め、最期まで信仰の言葉を述べ続けておられました。
亡くなる少し前には私へのお別れと感謝の言葉を話されましたが、その際も穏やかな表情と口調のままでした。そして最期も静かに旅立たれました。

ここまで信仰が強い方も珍しいので、私は4カ月間担当して様々な事を考えさせられ、同時に信仰の凄さをまざまざと見せつけられました。
この方にとって、薬よりも信仰が役立った事は間違いないです。

このケースを通じて再認識したことは、私の役割はあくまでも伴走者であることです。
お一人お一人に応じた伴走が出来るように、今後も努めます。

先週、大阪までコンサートに行きました。
2700人満員のホールでの演奏と熱気は素晴らしかったです。
夏の疲れを吹き飛ばす気分転換になりました。