院長コラムhead doctor’s blog
死への恐怖からの解放19.2.14
先日、50代のがん患者さんを自宅でお看取りさせて頂きました。
独身の方で、ご両親と愛犬1匹と暮らしていました。
非常に気配りの方で、職場からの信頼も厚く、自宅にも頻回に職場の方が来られていました。
大病院でがん治療を頑張ってこられ、病院の主治医先生もとても熱心な治療を提供されていましたが、病状悪化で抗がん剤治療が終了となり、私に訪問診療の依頼がきました。
初回訪問では、見た瞬間に残された時間はあと1か月はないと分かりました。
急いで様々なことを進めないといけませんが、訪問看護師さんとケアマネさんが迅速に大活躍してくれました。
肉体的な痛みは医療用麻薬で緩和出来たのですが、ご本人の表情は全然変わらず険しいままです。
その原因は主に3つでした。
①死への恐怖
②自分の病状悪化しても周囲への気配りしないといけないという気持ちに縛られたままだから
③病院への外来通院(病院主治医への絶大な信頼)も心の支えだが、通院することが難しくなっているけど自分からは通院を辞めるとは決められない
ご本人の性格を見極め、かつ日に日に変化(悪化)する病状を考えながら、病院への通院をいつ最後にするかのタイミングを探っていました。
訪問開始から2週間で病状はさらに悪化したため、外来予約の前日に病院主治医に手紙を書き、明日の外来が最後の通院になることを主治医よりご本人に説明して頂きました。
その翌朝は私が自宅へ訪問し、ご本人とよくお話しをして、また父上ともお話しました。
その日の訪問看護師さんからの報告は、「先生、本人と一体何を話したんですか?昨日までとは別人のような穏やかな表情になってます」でした。
この報告を聞いて、私の「役割」はほぼ終了したと判断でき、安心しました。
その後の訪問では、すべてから解放されたご本人より深い感謝の言葉を頂戴しました。
そして数日後に穏やかな表情のままで、部屋に入りきらない大勢の家族と職場の仲間に見守られながら旅立たれました。
天上のDさんへ
貴方の穏やかな表情と笑顔は忘れませんよ。
短い期間でしたが、担当させて頂きありがとうございました。