院長コラムhead doctor’s blog
穏やかに死ぬ力を引き出すためには22.7.31
前回の続きです。
タイトルだけ一見すると穏やかではありませんが、お付き合い下さい。
患者さんも家族さんも皆が望む「最期は穏やかに過ごしたい」と、ヒトに備わっている(かもしれない)「穏やかに死ぬ力」の両方を引き出すためにはどうすればよいのでしょうか?
この問いに対する完全な答えはまだありませんが、現時点で私が感じていることを書きます。
①医療者として最善を尽くしたか?
身体的な症状緩和だけでなく、メンタル面も含めた苦痛緩和を行っているかは絶対的な必要条件です。
これらは薬剤の駆使だけでは実現しません。患者さん/家族さんの性格や人生観、その日の病状に応じた距離感を常に現場で考え、自然体で相手の懐にいかに入って心身両面の苦痛緩和を図ることが重要と考えています。
②「穏やか」を邪魔するモノを極力減らす努力を尽くしたか?
死が間近に迫った時は、通常の常識が逆に「穏やか」を邪魔することがあります。
最も分かりやすい例が点滴です。
死が間近な状態では、もはや水分もほとんど不要となります。
その状態では、無理に点滴をしても内臓では吸収/利用出来ずに、体中にただ溜まるだけです。
しかし、一部のケースで点滴を強く希望されることがあります。
そんな時は、点滴をして欲しい理由を確認した上で、点滴を行うことの弊害を説明します。
説明で納得される方もいますが、それでもなお希望であればやむを得ず施行しますが、行えば行うほど「穏やか」な状態から離れていきます。
点滴を一例に挙げましたが、他にもケースによって様々な事があります。
患者/家族さんも我々在宅スタッフも人間ですから、多種多様な想い、事情、思惑が交錯する中で在宅医療は日々行われています。
「穏やかに死ぬ力」があるかどうかを私が証明する自信はありませんが、答えのない命題を意識しながら今後も自分の役割と向き合っていきます。