院長コラムhead doctor’s blog
辞世の歌22.11.1
和歌山市内も紅葉が進んでいますね。
皆様、体調管理は大丈夫でしょうか?
今回は開業1年目の8月~11月にお看取りまで担当した患者さんの想い出を書きます。
この方は80代の女性で、がんの末期状態でした。
がん患者さんとは平均25日のお付き合いですが、病状悪化は比較的ゆっくりで3か月間担当しました。
短歌が趣味だったそうで、色んな思い出を語ってくれました。
ご家族も懸命にサポートをされ、いよいよ危ないという時期には、他府県におられる家族さんも大勢来られて、賑やかに過ごされました。
亡くなる2~3日前には、妊娠中の孫さんのお腹に私の聴診器を当てて、顔を見ることの出来ない曾孫さんの胎動をご本人に聞いて頂きました。
逆にご本人の胸に聴診器を当てて、かけがえのない命の音を孫さんにも聞いて頂きました。
亡くなる6時間前には、ご本人が「先生に最後のありがとうを言いたいから呼んで欲しい」と希望され、私がすぐに往診するとしっかりと私の眼を見ながら感謝の言葉を述べられました。
その時に頂戴したのが、下の歌です。
待ち人の笑顔思へば我が担う訪問診療心念の境
薫風の秋の日中を待ちくるる
患者の在りて心ははやる
診療にかける生命は不変なり
笑顔を添えて待ち人のもと
蒼星は常にかがやく道しるべ
過去に戻れぬ未来を展く
今でもよく覚えていますが、この方は3カ月間いつも私の訪問を心待ちにされていました。
私や訪問看護師さんとご家族全員が1つとなって、命の音が消えるまで支え続けた5年前の初秋の想い出です。
秋の深まりなど関係なく、うちのお猫様は今日もよくお休みです。