院長コラムhead doctor’s blog
道を極める22.6.7
郊外では田植えの季節ですね。
昨年、ある武道で頂点を極めた方の在宅医療を担当させて頂きました。
初回訪問で自宅へ伺うと、部屋中一面に大会でのトロフィーや賞状がずらりと置いてありました。
社会人の全国大会で優勝されたこともあったそうです。
私が担当した時にはもう武道は出来ない状態でしたが、ベッド上に道具を置いていつも触っておられました。
その道具に興味を示すと、嬉しそうに解説してくれ、道具の持ち方を教えて頂きました。
道具は闇雲に使用すれば良いのではなく、いかに力みをなくして瞬間的な動きが出来るように鍛錬を重ねるのが難しいとも話されていました。
全国大会で優勝する程の腕前ですから、試合開始で向かい合った時の、相手の立ち居振る舞い、道具の持ち方、表情や視線の動きで、どのくらい強いかは大抵分かったそうです。
人生の後半は仕事の合間に、受刑者の出所後の更生のお手伝いをボランティアで長くされていたそうです。
あまり詳しくはお話されませんでしたが、恐らく大変なご苦労があったと推察します。
道を極められた方、普通では出来ない役割を担われた方の言葉には、やはり重みと凄みがあります。
私は武道ではなく在宅医という道を歩んでいますが、会話の中で幾つもの学びを頂きありがとうございました。
ベッドから見える外の景色は、田植えが終わった稲の新緑と蛙の大合唱でした。
「古の人は道のために道を歩む。今の人は名利のために歩む。」
ある高僧のお言葉です。
この方を担当させて頂き、この言葉を改めて痛感しました。
私も自分が信じる道をブレずに歩みたいと日々心掛けています。