院長コラムhead doctor’s blog
Sさん20.7.20
今日のお話しは今年の春に担当したSさんです。
患者さんは80代後半のおじいさん、奥さんと二人暮らし、娘さんが市内在住で頻回に両親を見に来ていました。
病名は肺癌で、リンパ節転移による食道狭窄のため、通院していたA病院で「今後はもう食べれないので、自宅近くの病院か在宅で点滴を受けるように」と説明があり、私に紹介されました。
緊急を要する依頼だったので、依頼当日に自宅へ初回訪問しました。
A病院の紹介状には記載なかったのですが、本人と家族に経緯を聞いていると2日前まで普通に食べれていたとのこと。
ここで元消化器内科医だった経験が活き、Sさんはまだ食べられる可能性があると判断し、本人/家族さんにその旨を説明すると治療に挑戦したいと希望されました。その場でB病院に電話で頼み翌日入院しました。
そして内視鏡で食道ステントを留置してもらい、再び食べられるようになり退院されました。
家族とともに食事を楽しみながら人生最後の時間を過ごし、私の訪問時にSさんはいつも笑顔で迎えて下さいました。
A病院の言う通り食べずにいたら2週間程度の時間だったと思いますが、2か月以上食べながら過ごせました。
これには私だけでなく、A病院と私との間をつないでくれた某Dr、急な依頼を快く引き受けてくれたB病院、そして訪問看護師さんの協力があってこそです。
がんの病状悪化の流れにただ身を任すだけでなく、時には攻めの方針が必要な時もあります。
この辺の判断は非常に難しく、直感のような部分もあるので言葉では言い表しにくいです。
患者さんに残された時間が少しでも有意義になるように、お一人お一人に日々向き合っています。