院長コラムhead doctor’s blog
じっくりと聴いていると・・・19.11.8
寒くなったからだと思いますが、年配患者さんの発熱が増えています。
ほとんどの方は重症にはなりませんが、余力の少ない状態ですから、ちょっとした風邪から重症に発展することもあります。
出来るだけ往診対応を心掛けています。
普段の訪問診療で可能な限りじっくりとお話しを聴いていると、実に様々なお話しを聴けます。
いい話しばかりではなく、現在の医療に対する「生の声」を聴くことも多いです。
私のクリニックへの紹介元は、大抵は病院です。
その病院自体の方針、医師の対応、看護師の対応、それ以外の職員の対応etc・・・。
「ほとんど説明がなかった」
「先生の方針に沿わない質問すると怒鳴られた」
「(入院中)主治医の顔をほとんど見なかった」
「(入院中)看護師の間で申し送りが全くされていなかった」
「(大病院)主治医の専門外は、かなり悪い状態でも絶対に診てくれない」
自分自身が勤務医の時にしていた行動も多く含まれているので、そんな時は心の中でひたすら反省しています。
決して病院側を責めるつもりはありません。
何故なら病院に関する国の制度や人員不足問題で、現場ではどうしようもない事も多いからです。
大病院も中小病院もそれぞれ非常に多くの問題を抱えながら、日々の医療を行っています。
在宅医療に従事するようになってから現在の医療の限界を超えた患者さんを多く担当するようになりました。
医学では治らない人に医療者としていかに接するかは、難しいことだと思う人もいるでしょう。
私が大事にしているのは、ユーモアを交えながらただ「聴く」ということです。
私の在宅医療は、「聴く」に始まり、そして「聴く」に終わります。
「聴いて」いれば、軽くなる痛みもあります。
「聴いて」いれば、薬の数も減ることもあります。
そして「聴いて」いれば、我々が患者/家族さんから教えて頂けることも多いです。
在宅医療を知らない医療者はきっと鼻で笑うことでしょう。
でもこれは偽らざる真実です。
病院でしか出来ない医療があるように、在宅でしか出来ない医療もあることを実践しながら確信しています。
先月某日、末期がんの小学生で、今日にでも亡くなる可能性があるから、緊急で診て欲しいという依頼をお引き受けしました。
その日の夕方に初回訪問をしましたが、本当に厳しい状態でした。
しかし、何故か分かりませんが翌日には持ち直して、その後は調子が良ければ小学校に行ったり、家族と外出したりしています。
初回訪問から1か月近くが経ちましたが、昨日も1時限だけ授業に参加しています。
これからもご家族や友達との時間が少しでも続けばいいですね。
次回はがんセンターのお話しの続きです。